社長メッセージ

MCHCの社長に専念した1年、さらにその先を見すえて

 社長の越智です。純粋持株会社である三菱ケミカルホールディングス(MCHC)は、発足以降10年以上の年月をかけて、機能商品、素材、ヘルスケアの3分野のバランスの取れた持続的成長をめざして大胆な構造改革に取り組んできました。具体的には、汎用石化・無機事業をはじめとする事業の撤退や売却を実行する一方で、三菱レイヨンや大陽日酸などの連結子会社化、新規事業の買収を行うなど、抜本的なポートフォリオ改革を実施しました。構造改革が進んだことで、私は、事業会社である三菱ケミカルの社長兼務を解消し、2018年4月よりMCHC社長に専念し改革をさらに進めています。

 コーポレートガバナンスの強化については、執行役の合議によって決定される執行役会議を新設し、機動的な経営と客観性・透明性が確保された体制とすることで、当社における監督と執行の分離を進めてきました。これに加え2018年度は、グループ経営規程を見直し、当社と事業会社機能・役割をより明確にしました。また、内部統制システムのモニタリング体制を構築し、各グループ会社の内部統制システムの改善を促進し、リスクの低減に努めています。

 私は、多様化・深刻化する社会課題や急速な科学技術の進歩に対応し企業が持続可能な成長を獲得していくためには、中長期経営計画が重要だと考えています。当社は現在、2050年の世界を見すえバックキャストし、人・社会・地球の観点やテクノロジーの視点から、2030年にあるべき姿を描いた中長期経営基本方針「KAITEKI Vision 30」の策定を進めています。この方針のもと、2021年度から始まる次期中期経営計画を来年度に策定する予定です。この中で従来の財務指標だけでなく社会的なリスク指標も考慮したポートフォリオ改革を推進していきたいと考えています。

深刻化する社会課題へソリューションを

 世界を見渡すと経済のグローバル化が進み、科学技術はデジタル化、バイオ、ロボティクスなど急速に進化しています。他方、国際社会の課題は、地球温暖化や水・食糧問題だけでなく、貧困、格差、教育問題などさまざまな分野で拡大し深刻化しています。これに対し国連は2015年に掲げた持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の対応について、世界各国政府だけでなく企業や市民など全ての力を結集するよう求めています。

 私たちMCHCグループは、深刻化する社会課題に対し、さまざまなソリューションを提供する化学会社として、世の中でどのような役割を担うか自ら問い続け、2011年からKAITEKI経営に取り組んできました。KAITEKI経営はまさに、SDGsなどが示す社会課題を起点に価値を創造し、地球環境と社会の持続的発展に貢献するとともに、自らの持続的成長を実現するものです。ソリューションプロバイダーとして社会課題の解決に貢献しながら成長し続ける企業でありたい、と私は考えています。

KAITEKI経営の第3ステージでは個々の積極的アクションを活かす

 KAITEKI経営の第1ステージは、従業員全員が企業価値としてのKAITEKI価値を理解して、仕事の中で活かすことから始まりました 。第2ステージでは、世界のマクロトレンドから導かれる重要課題に対し、ソリューションを提供することで経済価値と社会価値を両立させながら、ポートフォリオ改革を行ってきました。この結果、Dow Jones Sustainability Indicesでワールドクラスの評価を得ることができ、コア営業利益は1,000億円から3,500億円の水準へと向上させることができました。

 そしてKAITEKI経営は第3ステージに入り、KAITEKIを「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」、英語では「The sustainable well-being of people, society and our planet Earth」と再定義し、健康までを含めた心地よさを、会社、社会だけでなく、人や地球規模で実現するという強い意志と理想を示しました。この理想を実現するためには、従来以上の努力が必要であり、深刻化する社会課題に対し、従業員一人ひとりが自分自身のこととして捉える必要があると私は考えています。知恵を絞り、積極的なアクションプランを策定し、それを会社の事業戦略に落とし込み、確実に実行していかなければなりません。つまり、「個々の積極的アクションプランを事業戦略へ」です。私たちMCHCグループに属する一人ひとりが、未来のために価値を生み出せる会社をめざしています。

イノベーションをおこす“人”づくり

 企業が社会課題のソリューションを提供し、持続可能な成長を遂げていく上で、イノベーション力の向上は欠かせません。各事業会社における、研究機能の拡充と研究員の活性化や創造性の向上、およびオープンイノベーションの推進を目的に、先端技術・事業開発室を2017年に設置しました。この組織を中心にデジタルトランスフォーメーションの加速、スターターやアクセラレーターとの連携推進のためのベンチャー機能の強化、新たなビジネスモデルの開発促進など、中期的イノベーション力を向上させています。また、The Global KAITEKI Centerの開設など、子会社の地球快適化インスティテュートを中心に国内外の研究機関や大学とのネットワークも拡充していきます。

 こうした変革の実現には、社内の多様な人材に加え社外からも多くの人材を集め、新たな技術や価値観を組み込むことが必要です。人事制度の改革を加速し、年功序列や新卒一括採用システムなどを見直し、KAITEKI健康経営をベースとして働き方改革を進めていきます。国内外を通じ真のダイバーシティを確立し、新しい時代に合ったイノベーションをおこす“人”づくりを行っていきます。

安全とコンプライアンスは企業の根幹

 企業としての大切な基盤は、安全とコンプライアンスです。過去の災害や事例を風化させてはいけません。製造設備の適切なメンテナンスの実施と、最新技術を活かした事故防止対策を立案し、着実に実行していきます。また、350社に及ぶ海外子会社でも、運転・設備ノウハウを浸透させ、人材を育成し、事故や災害防止を徹底していきます。コンプライアンスについては、各国の法令、規則、基準に的確に対応し、内部統制システム強化のために、新たに導入した内部統制マップなどを用いて改善を進めていきます。大切なことは、最後は“人”であり、従業員一人ひとりが自分ごととして物事を捉え、実行するよう働きかけていきます。

多様な意見に耳を傾け、価値創造に活かす

 今、私たちを取り巻く環境は急速に変化し、社会のニーズも多様化しています。これらに迅速・的確に対応していくには、古い思考にとらわれず、多くの人々の考え方や意見に耳を傾け、多様性を価値創造に活かし、私たち自身も進化していく必要があります。私は、ステークホルダーの皆さまにも対話を通じてさまざまな意見を頂戴したいと考えています。社会価値と経済価値を持続的に両立させることをめざして、今後もKAITEKI経営に取り組んでいきますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

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三菱ケミカルホールディングスについて

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